アルケミスト ~夢を旅した少年~

著者:パウロ・コエーリョ
出版社:角川文庫

全てはここから始まる―――
出逢ったのは中学生の頃だろうか
こんな本があるのかと、その衝撃はいまだに色褪せない
また同時にこんな本を書こうと私自身も一つの夢を持った機会でもあった。
人生の岐路に立った時はもちろんのこと、いつ読んでもヒントの多い本である。

羊飼いの少年サンチャゴは、アンダルシアの平原からエジプトのピラミッドに向けて旅に出た。そこに、彼を待つ宝物が隠されているという夢を信じて。長い時間を共に過ごした羊たちを売り、アフリカの砂漠を越えて少年はピラミッドを目指す。「何かを強く望めば宇宙のすべてが協力して実現するように助けてくれる」「前兆に従うこと」少年は、錬金術師の導きと旅のさまざまな出会いと別れのなかで、人生の知恵を学んで行く。欧米をはじめ世界中でベストセラーとなった夢と勇気の物語。

物語の中で、少年は様々な困難に襲われながらも、宝物を見つけようと旅を続けていく。夢を解釈してくれる老女のジプシーに「エジプトのピラミッドに行かねばならない(中略)そこでおまえは宝物を見つけてお金持ちになるのさ」と少年が告げられるところから物語は動き出す。読み進めていくと、ただ単に夢を持つことが素晴らしいということだけを伝える小説ではないことがわかる。ここで描かれる夢はきれいごとではない。

「おまえが自分の内にすばらしい宝物を持っていて、そのことを他の人に話したとしても、めったに信じてもらえないものなのだよ」

どんなにすばらしい夢を描いたとしても、他人も同じようにその夢をすばらしいと思ってくれることは少ない。そもそも理解されず、ばかにされたり、社会的な評価を告げられたりする。そのすばらしさを伝えることは簡単ではない。夢がほんとうに叶うのか疑いたくなる夜も幾度と訪れる。夢に恐れはつきものだ。少年はそれでも夢を追い求め、前へ進む。

夢を諦める理由と弊害に関しても書かれている
我々はつい他人のために生きてしまう
人は自分が見たいように世界を見ている
その偏見や先入観から抜け出して捉えてみること
そうするとあなたにもきっと前兆が現れる
その前兆を信じて、行動してみること

単純に引き寄せの法則を小説化したものや、スピリチュアル本としては片付けられないエッセンスが詰まった小説である。

アルケミストを日本語訳すれば、錬金術師となる。
また言葉の切り方にもよるが、アルケーとはギリシャ語で始まり、原初を指す。
初めは他者からみたら誰も価値を見出せない、まるで路上の石ころのようなものであっても、自身が価値を見出し、追い求めていけば、いつか誰もが羨むような金銀のような価値へと変わる。その生き方そのものが錬金術であり、我々は誰しもがアルケミスト=錬金術師となれるのである。

この本の魅力を余すことなく伝えられる筆力が私にはまだないからこそ、私もまた夢をかつてのものにしないように追いかけ続けたい。

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